アユタヤの歴史は悲しい。
ビルマの侵攻により、
廃墟と化したアユタヤ市街。
仏像は頭部がなく、
胴体だけで着座している。
そんな悲しい歴史をまるで昔から見てきたような鳴き声で、
「ホッホゥー」
「カーワォ」
「コーエル」
「オーアォ」
聞く人により表現のしかたがまちまちだが、
実に悲しく聞こえる。
どこで鳴いているのだろうか?
鳴き声は聞こえるが姿は見えない。
アユタヤのジダパリゾートに滞在中、
リバーサイドのオープンデッキでビールを飲みながら、
チャオプラヤー川を眺めていた。
陽がゆっくりと暮れていく。
バンコクから来たのかクルーズ船が、
「コンコンコンコン」と近づいてきた。
大勢の観光客が
ディナーを楽しみながら川をさかのぼっていく。
また、バンコクへ向かうクルーズ船では、
若者たちがカラオケで盛り上がっていた。
私は思わず手を振ると、
向こうも答えてくれる。
何とも言えないひと時、
夕日が対岸のお寺に吸い込まれていく。
のどかで心地の良い最高の瞬間。
このまま、時間が止まってくれれば良いと思う。
すると、どこから聞こえてくるのか
「カーワォ、カーワォ」と悲しい鳥の声。
それも、絶妙なタイミング。
夕陽が沈もうとしている瞬間を狙って鳴いてきた。
私までも、黄昏れ気分で悲しくなる。
この鳥の正体は「ノックカーワォ」
日本名は「オニカッコウ」
全長40㎝~44㎝
インド、中国南部、東南アジアに
広く生息していて日本でも確認されている。
真っ黒でまるで日本のカラス、
メスは鳴き方が違うらしいが私は聞いたことがない。
タイ全土に生息しているので、
あちこちで鳴き声を聞く機会があると思う。
朝早くから鳴いていたり、
夕方になると鳴き始める。
アユタヤでは夜の9時頃まで鳴いていた。
私はこの鳴き声を聞くと、
チャオプラヤー川に沈む夕陽の黄昏れ場面を思い出す。
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